米政府の連邦通信委員会(FCC)では、2002年に電波監理への新しい取り組み方についてのタスクフォースがパウエル前委員長により設立されて以来、様々な経済学的及び法学、または技術的な観点からみた電波監理についての取り組みが立案され開始されてきている。同じく、日本では、2001年のe-Japan戦略または2004年のu-Japan“戦略“から発進したユビキタスネットやブロードバンド対策について取り組みを進める動きが見られる。このように両国で電波監理の規制改革が進められている中で、最近重要な技術として浮上がり、そのタスクフォースにおいて検討されてきた最先端の新技術がある。それはソフトウェア無線(Software Defined Radio、以下SDR){別紙の説明を参考ーf1-}iで処理される人工知能の力を持つコグニティブラジオテクノロジ(以下、CRまたはコグニティブ無線)である。このテクノロジーを活用することにより、情報社会にとって最も重要となってきた無線電波という資源が、より多くの利用者に活用され、より有効的かつ混信を生じことなく利用できるようになると言われている。
ここでは、CRについての基本的な技術内容、行政での対応、さらには今後の電波管理への影響についてのべるが、まず、アメリカにおいて無線電波という物理的な天然資源を位置付ける「電波監理」の規制緩和の概念、その取り組みの(何年)の成果、及びCRがその多くを実現しつつあると考えられている要因について説明する。
「アメリカで見る電波という天然資源を規制する『電波管理』」
情報社会を支える現代社会の情報産業、とりわけ通信にとって、最も重要な天然資源と見なされてるようになったものは、無線電波の電磁波である。アメリカでは、電波は、1934年以後は、自由な共有財産または私有財産とみなすことなく、公益を害することがないよう行政で利用を規制する必要があるとしてきた。しかし、情報社会の進歩に伴い激増する電波に対する需要と電波の社会的重要性を勘案して、1934年に連邦法律である通信法によって、米国では、電波という資源は、国家の連邦通信委員会(FCC)と国立情報通信局(NTIA)で監理する天然資源位置付けそれ以来、米連邦政府が抜本的に新たな電波監理を探ることとしている。FCCでは、パウエル前委員長によって設立されたSpectrum Policy Task Force(以下SPTF)が顕著な動きとも言えるが、NTIAでも今年大統領から命令を受け、FCCのSPTFの同様で、根本的な観点に戻って、電波を法律論、経済論などのあらゆる観点から、電波をどう規制すべきかについて行政内外に問いかけている。(NTIAでは電波の有効利用などの実行プランの策定について、2005年11月30日の締め切りとされており、まさにホットトピックスであろう。)
FCCの利用制度では、電波を私有財産または共有財産と考える両方の制度がある。FCCの免許制度(ライセンス系ともいわれる)ならでは、特定周波数で一利用者だけに認められる利用、いわゆる排他的な利用(exclusive right)というものがあり、その権利を取得するために、競売で免許権利を”買う”という方法がよくとられる。ライセンスを勝ち取った者は、他の所有権と同じように、他の者をその免許の所在地(多くの場合は一定の周波数を指す)から排除する法律上の権利を持てるようになる。当然、通信法上では”電波”を所有することは硬く禁じられているので、英米の法理学においては、W. N. ホーフェルド (Wesley Newcomb Hohfeld)などの学説による法的関係の分析では、完全な自由たる権利にはならない”bundle of rights”という制約付き及び分類化された権利制度もある。電波という資源を利用するための許可は、取得者にとって重要な経済的価値がある場合が多く、最近のメディア集中排除の問題の要因となっている、大手放送免許を所有する企業や携帯通信事業者の合併などをみると際だってわかるはずである。例えば、通信、放送事業者の場合、主な財産となっている資本は、国から利用許可された免許で電波を排他的に利用できることに違いないであろう。よって、経済論に沿った市場原理でみる電波の利用許可は、一種の権利として存在するものだという一つの前提となり、アメリカではその権利をどう定義して取り扱うべきかというのは、電波監理にとって重要な課題となるわけである。まさにSPTFから発展した二次市場によるスペクトラムリース(免許人の第三者への利用一部貸出し権限)やそのほかの市場原理を尊重する政策は、これを基礎概念にしている。
しかし、FCCの電波監理はライセンスによる利用許可だけではなく、共有財産として扱う「コモンズ」という形式の解釈論も重要である。家庭用で使われる電子レンジ、コードレス電話の受話器など、またはアメリカの通信業界の蘇生にもなったと言われる”WiFi”の無線LAN通信は、すべて無線電波を出しているが、その「利用」についての”ライセンス”は不要となる「アンライセンス」、いわゆる免許不要の制度で扱われている。ある一定の周波数の範囲では、低電力の送信であれば大人数の人が同時に電波を利用しても混信は発生しない、という理屈がこの免許不要制度の根本にある。“小さな国を目指す“今日現在の行政にとっての規制緩和の実現性においてみても、新技術が次々に誕生することによってライセンス制にせざるを得ないような自体が次々に減少しているという声も多く、規制緩和が進む中では、免許不要制度のメリットがより一層注目されている。
どちらの制度にも一長一短があるので、極端にどちらかに統一するというのではなく、今後は両方の長所を活かしつつ、積極的に両者を織り交ぜながら、新しい電波管理が統制されることとなるであろう。しかし、どちらの制度においても、新技術、とりわけコグニティブ無線は欠かせない役割になりつつある。
「CRとは具体的にどんな技術を指すのか、どんな政策に関与しているのか」
「許可」なしの利用が認められない電波の世界においてこそ、どのような技術をどのように利用することを認めるかというバランスが重要となる。導入される規制は、技術的な可能性に見合って現実的でなければいけないが、同時に技術の足を引っ張るようなこと、あるいは技術の可能性を活かせないようにすることがあってはならない。FCCのCRについての政策策定は、この均衡を基本として、2003年の規則制定告示(Notice of Proposed Rulemaking、以下NPRM)から2004年報告命令(Report and Order、R&O)へと進んでいる状況である。規則制定告示における政策提案の主な内容は、以下にます五つの質問・提案であった。1また、2004年の報告命令ではSDRのセキュリティや適合証明についての規則改正もあったが、そのほかの二次的市場やルーラル地域における無線インフラ対策など、課題の様々な最新の政策に関与している。
この分野を開拓したジョセフ・ミトラー電子工学博士は特に四つの知能(監視力、指示力、決断力と行動力)でCRを定義付けている2。なお、CRの定義は様々であるが、基本的な定義として「意識」と「推理」する知能を有することが要点だと考えられている3。CRは知能を持つソフトウェアだと定義しても、漠然としたイメージのみで実際の技術の中身を把握することは多少困難だが、CRは電波環境を意識する機能、いわゆる”awareness”、またはその電波環境および実際の利用状況についての情報を活用し最適に電波管理する機能、いわゆる”reasoning”などで電波監理の理想なケースに近づかせる力を持つ技術と見られている。Awarenessとは、様々なところから情報を収集して、その得た情報を分析して知識として記憶することを指す。情報処理の人工知能学の世界ではこのような力は知識管理(Knowledge Management)などの学問分野とされている。また、Reasoningとは、知能学では、命題論理(述語論理)や統計的推理などの行動を計画し実行するような学問分野に当たる。
最近際立っているCR機能の応用した政策としては、地上波テレビ割当周波数において免許不要局による周波数利用を検討する政策がある。この政策では、免許不要の微弱送受信機が場所の意識および電波環境を測定し有効利用を行う演算処理能力がある場合においては、地上波テレビの鑑賞に混信起こさずに共用が可能な地域があり得るのではないかということについて検討している。2004年に規則制定告示が公開されてから、多くの通信メーカや事業者の間では激しい議論が交わされてきているが、まさにこのCRの新技術がなくては可能な話とはならないと思われる。
FCCのほかに、米国連邦政府機関である防衛先端研研究所(DARPA)では、CRを活用して、連邦政府による電波利用の効率性、信頼性などを10倍にまで上達させるということを目標にしているXG(次世代の通信技術)プログラムの振興を図ってる4。また業界では、SDRを積極的に振興させているSDRフォーラムのトレードグループや、モトローラの大企業からVANUという中小企業まで幅広い企業の活躍が見られる。国際面では、ITU(国際電気通信連合)では2007年のWRCに向けて、SDR・CRの今後の世界的な技術基準の統一も議論されている。
以来、日本では、SDRとCRは総務省が2003年12月15日にSDRの基準認証制度について意見募集を発表して以来、ユビキタスネットやブロードバンド政策などの面では真剣に検討している様子がわかる。やはり、電波がグローバルな社会において重視される資源である限り、CRの法規による取り扱いが今後重要な課題として残ることだろう。
さて、ソフト無線とはなんでしょうか。アナログ・ディジタル信号処理とまたは半導体・ASICとFPGA(汎用的な処理装置)の違いを背景にし、ソフトウェア無線は、送受信の論理命令が書き換え可能なRAMにて、波形作成の搬送波作成、情報信号を搬送波に変調、信号処理制御は処理装置で実行します。ハードウェアを改造する必要もなく、周波数、変調方式、振幅作用などを構成して、どんな送受信信号にも応用できて、通信出来るようになります。いわゆる、従来のパソコンと専容器の違いです。
波形を作成・解釈するソフトの部分はアンテナに繋げたA/DとD/Aカードとインターフェイスして、ベースバンド、IF、またRF帯の信号処理はすべて一般の汎用プロセッサーやDSPで行えます。信号処理は書き換え可能になっているため、最新のフィルターを利用したいときでもまたは違う変調方式を実験行いたいときでもソフトの更新・開発によって実現することができます。ソフトのポータビリティ〔プログラムの移植可能性〕を重視して開発していると、信号処理命令は自分の5万円パソコンでも最新型の専用機の処理装置でも同じソフトが実行可能になります。既存品に負けないフィルターのソフトウェア開発ができるし、トランシーバーの内蔵フィルター・チューニング等の機能はソフト制御で設定・調整ができると即時に最適なフィルターを選択してリアルタイムなインタフェア‐対策に役立てるなどで、公共の電波の最適利用にも繋がります。ソフトの更新ができると、現状の必要に応じてフィルターや変調方法を選択や更新によって、今まで出来なかった電波管理でも可能になるでしょう。直接IF帯まで変換できますので、Non-Linearな変調までもできるようになります。可能性は本当に無限になります。ソフト無線はソフト処理に大変柔軟な基盤だというわけです。
※表1:ソフトウェア無線の形態と発展